ピアノを弾く際に必ず目にしなくてはならない楽譜。
でも、大譜表の楽譜を見た時、曲の冒頭の調号に、たくさんシャープやフラットがついているのを目にした途端、拒否反応を示すかたが多いように感じています。
そこで、なぜなのかと生徒に理由を尋ねると、楽譜を見て演奏する際に、白鍵の音は自由に読むことができるけれど、調号が多いと白鍵を黒鍵に置き換える作業が大変なのだそう。
その上、ダブルシャープとダブルフラットが付こうものなら、頭が混乱してしまい何がなんだか分からなくなってしまうとのこと。
ピアノは楽器の王様といわれ、88鍵もの鍵盤があり、24ある調性をすべて演奏することが容易な楽器であり、他の楽器と違いひとりでオーケストラのような広い音域で演奏することができるのに、たくさんシャープやフラットがついた途端、演奏時にストレスを感じてしまうのは、とてももったいないことだと思うのです。
こんな時に役立つのが、五度圏のルールです
まず、五度圏の説明をする前に、前提として押さえておきたいポイントがあります。
- 音楽でのスケール(音階)とは…音の並び方、すなわち、長さを測る測定器具の「ものさし」に当たるものと同意義で使用されています。
音楽においては、基準の音から規則正しく並べた音の並び(ドレミファソラシドなど)のことを「スケール」音のものさし=(基準)と呼んでいます。
*今回は上行形に絞って進めます。
ハ長調の1オクターブは、8個の音で成立しています。すべての音が白鍵で、ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ドです。
- 通常ピアノ用の楽譜は、2本の腕で各5本ずつの指で演奏することを前提とした記譜になっていることが大多数です。
- 先ほどのスケールで示した音は8個あるため、片手で弾くには指が足りません。そこで、両手に半分ずつ振り分けます。すると、今度は指が2本分余るため、便宜上、それぞれの親指を使用せず、各音と指を割り振ります。
| 左手 | 左手 | 左手 | 左手 | 右手 | 右手 | 右手 | 右手 | |
| 指番号 | 5 | 4 | 3 | 2 | 2 | 3 | 4 | 5 |
| 音名 | ド | レ | ミ | ファ | ソ | ラ | シ | ド |
左手5指=ド、左手4指=レ、左手3指=ミ、左手2指=ファ
右手2指=ソ、右手3指=ラ、右手4指=シ、右手5指=ド
これで、ドから始まる1オクターブ分のスケールが完成しました。
- 本来、1オクターブは明確な定義があり、 「ある音を基準として、周波数比が2倍になる音」を「1オクターブ上の音」と呼びますが、今回は、分かりやすくするために、あえて、ドからその1つ上のド、 レから、その1つ上のレ…といったような表現をします。
音と音の隔たりを度数といいます
ドとド=1度(同じ音は1度とカウントします)、ドとレ=2度、ドとミ=3度… となります。
- ピアノの鍵盤は、白鍵と黒鍵で構成されています。この白黒の鍵盤は一番左の鍵盤から、一番右の鍵盤まで番号が割り当てられており、一番左は1番、一番右は88番です。ピアノの左側を上にして一番右側から眺めていると想像してください。すると、白鍵と黒鍵が互い違いに並んでいることが分かると思います。(時々、白鍵同士で並んでいる場所もあります)
- その互い違いに並んでいる隣の音との並びを半音(鍵盤で数えると基音を含めて2つめの鍵盤との並び)、一個飛びの並び(鍵盤で数えると基音を含めて3つ分の並び)を全音と呼びます。
分かりやすくすると、
- 半音とは、元の音を含めた鍵盤2つ分(隣り)
- 全音とは、元の音を含めた鍵盤3つ分(一個飛び)
1.ドからファまで(左手)
- ド⑤ → レ④ → ミ③ → ファ② 全音+全音+半音
今度はソからドまで(右手)
- ソ② → ラ③ → シ④ → ド⑤ 全音+全音+半音
このように並びました。これがハ長調(Cメジャー )のスケールで、左手と右手を連結するところは全音になります。
2.次に ソ② → ラ③ → シ④ → ド⑤ (右手) をその場所に置いたまま
左手を右手に被せて、右手で弾いたところを全て左手に置き換えます。
その後、
右手でレ② → ミ③ → ファ④ →ソ⑤と続けると、
ソラシド、レミファソ と並びます。
すると、先ほどのパターンとは違い「全音・全音・半音・(全音)・全音・全音・半音」という並びになりません。
レ② → ミ③ → ファ④ →ソ⑤の並び順は、現在、全音+半音+全音 です。
このため、「全音+全音+半音」の順に並び変える必要があるため、ミ③ → ファ④ の幅を半音高くします。
ファに♯をつけると半音上がり、「全音+全音+半音」 となりパターンが正しくなりました。鍵盤の色は ○○○○ ○○●○で、ト長調の完成です。
この規則性を保って順に「全音+全音+半音」で連結させていくと、12あるすべての長調の音階を弾くことができます。
これで、ト長調にシャープが1個つく理由に気づいていただけたと思います。
3.さらにパターンを順に重ねて上へ進む
レからパターンを作ると、
レ・ミ・ファ♯・ソ / ラ・シ・ド♯・レ
となり、今度は♯が2個になります。
さらにパターンを重ねていくと、♯が3個、4個……と増えていきます。
ここからは、「5度圏」の説明です
先ほど、完成したドから始まる上行形の1オクターブを思い出してください。
先ほどは音階の構成のお話でした。
5度圏という名前があるからには、5つという数字がポイントになってきます。
今度は、左手の5本の指をすべて使い、先ほどのパターンを弾いてみましょう。
今度はもう一方のつなぎ目の音まで弾きます。①指の登場です。
ド⑤ → レ④ → ミ③ → ファ② → ソ①
5つの音を左手で弾きます。5つの音でドからソまでの度数が5度です。
最後のソの音を被せて次の5度を弾きます。
ソ⑤ → ラ④ → シ③ → ド② → レ①
前に出てきた「全音+全音+半音」を思い出してください。
①指を除いた度数の配列でしたね。
次は、
レ⑤ → ミ④ → ファ③ → ソ② → ラ① となり ファの位置にシャープを付けて半音上げます。
このように5つの音を順繰りに繋げて輪の形にしたものが5度圏なのです。
シャープ、フラットがついても、もう怖くない!
この5度圏の仕組みを理解しさえすれば、どこに♯がつくから、この音は半音上げて…というような、場当たり的な譜読みをしなくて良くなります。
もし、シャープが2個ついていたら、ドレミファソ(調号なし)→ ソラシドレ(♯1個)→ レミファソラ(♯2個) と 順を追って数えれば、何調かも理解でき、どこが黒鍵で弾くのかも一目瞭然です。

F♯まで進んだら、異名同音のG♭に置き換えて5音ずつ同じパターンで繰り返します。
(シャープからフラットへ置き換えが済んだ後、♭の数は♯とは反対に減っていきます。)
すると、Cに戻ります。 このようにシャープ、フラットがたくさんついている楽譜を見ても仕組みさえ理解していれば、黒鍵に対する抵抗が少なくなることと思います。
ぜひ、皆さんが演奏する際にお役立てください。
今回は長調の12調に触れました。この長調(メジャー)が理解できれば、短調(マイナー)はちょっとした工夫で理解できるようになりますので、また、別の機会に説明させていただきます。

